呼吸器の病気シリーズ

老人性肺結核

老人性肺結核の現況

老人性結核は、ほんとうに増えているのか

わが国の結核新規登録患者の大半は60歳以上で占められている。結核の新規登録患者数が平成9年より増加に転じて問題となっている。中でも70歳以上の塗沫陽性患者数(痰に菌が出ている人:感染源となりうる人)の増加は、1980年と比較して1997年では2.6倍に膨れ上がっている。また、60歳以上の塗沫陽性患者の割合も31.3%から56.3%に増加している。近年、高齢者入所施設における結核集団発生もあり、高齢者の結核は今後一層問題となることが予想される。

老人になぜ結核が多いのか。

1.年齢に伴う抵抗力の低下、免疫力の低下。

2.糖尿病、透析、副腎皮質ホルモン療法など合併症をもつ確率が高い。

老人の発病の形は。

1.一般の成人発症の形と同じ。自分の肺の中に静かにしていた結核菌が、免疫・抵抗力の低下で増殖し発病することがほとんどであり、他人から感染を受ける可能性は少ない

2.前に不完全な治療を受けていると結核の薬が効きにくい(多剤耐性菌)菌による結核となり、致命的になることがある。

3.結核後遺症を起こしやすい。

呼吸機能障害、肺性心(心不全)、肺真菌症および非定型抗酸菌症など

もうひとつの老人結核の問題点。

終戦前後に強い結核菌感染をうけた中・高齢者とより若い未感染の世代との二極化が心配される。老人から若者が結核をうつされる?

予防は

1.定期検診。特に免疫低下を起こすような合併症(糖尿病など)を持っている人は年Ⅰ回のレントゲン写真では不十分。

2.規則正しい生活

3.BCGは原則として老人には行わない。

罹ったかなと感じる症状は

新規登録患者の80%は自覚症状がある。咳、痰、胸の痛み、血痰、発熱。特に咳・痰が2週間以上つづく場合は要注意。


まさ内科クリニック 升谷雅行